今年の全国大会の会場は所沢ミューズ。毎年やれ浜松だ、やれ和歌山だ、と金がかかって仕方がない行事である全国大会、自宅から行ける立地というのはとてもありがたい。出費がかさむというデメリットはまあ置いておいて、終わった後にちょこっと観光をする楽しみや旅の恥はなんとやらで繰り広げられる狂乱の宴が味わえないのは残念ではある。
音響効果が予測できない初めてのホールで最高の演奏をすることは難しい。日頃練習をしている練習場は狭くて残響などは皆無に等しいので音量のバランスやセッティングを調整する必要が出てくる。奏者にとっては「吹き叩き弾き心地」が分からないまま最初の音を思いっきり出すのは精神衛生上よろしくない。やはり1度くらいは会場で音を出してみたい。というわけで明日は実際にホール練習をする日である。ところが全国大会は10月25日、1週間も間がある。全国どこの団体もやりたいことは同じであって、ホールのスケジュールは申込開始と同時にあっという間に埋まってしまう。要は前日に取ることができなかったのだ。しかし今年は所沢、楽器の運搬等は大学から遠く離れた地ではないのでたいした問題はない。会場が例えば北海道だとしてどうしてもホール練をしたいのならば、ホール練をして1週間泊まり続けるか1度東京に帰ってまた北海道に行くしかない。あっという間に破産、廃部である。
所沢市民会館にてホール練習。くせのあるホールだと散々聞かされていたにもかかわらず想像を絶する音響にしばし呆然。たっぷり2秒以上ある残響に加え音が素直に前に飛んでいくという素晴らしい音響を持つホールであった。が、いかんせん日頃我々がしている練習は、どちらかというと貧しい音響環境の中でなんとか豊かに聴かせる技術を磨く性格が強い。素直に音を出せばいいと頭では分かっていても自然と体が小細工を弄しようとする。結局どうもすっきりしないまま1日が終わってしまった。さて、事前練習が出来ない団体は果たしてどんな演奏をするのか。普段から良い練習場所で合奏している人たちはさぞかし楽だろうな。
所沢の中心部からやや外れた立地であるミューズ。食料調達にやや難がある。下見ついでに周辺をぶらついてみたらコンビニを発見。ちなみにホールがある方と線路を挟んで反対側である。公園が多いから終了後のミーティング場所には事欠かないかな。
バンド・エイドというチャリティコンサートに出演。演奏の出来はあえてここでは述べない。今回は、このタイトルをつけさせた千葉県柏市立柏高等学校のポップスステージについて書いていこうと思う。指揮者がステージの進行を仕切って次から次へと繰り出される演奏の数々、なんとまあ娯楽に徹していることか。充実したソロ、輝きのあるサウンド、そして極め付きはあの踊り! 下手するとジャニーズJr.より巧いぞ。フォーメーションによる演出も、まるでスライドを見ているかのようなきびきびとした動き。さらに絶妙なスパイスとしてのあの楽しそうな表情。高校生らしい、という陳腐な言葉しか浮かばないのは寂しい限りだ。あんな頃もあったやね。
が、その裏側には軍隊のように厳格な規律のもとでの猛練習がある。うちでは不可能な練習が。自由意志で入部する部活動ではあるが、高校と大学でその性格に大きな差がある。大学同士でも推薦制度の形態によって活動の方向性がかなり違ってくる。二兎追うもの一兎も得ず。ならば徹底的に自由にやっていこうじゃないか。深い意味のある自由を。
全日本吹奏楽コンクール全国大会がついに明日に迫った。8月の予選から続いてきた練習はこの日のためにあるといっても過言ではない。理由は2つある。レコーディングとしての性格がまず1つ。そして2つ目は(向こうは相手にしているのかどうか分からないが)神奈川大学との競演である。神大の課題曲3は素晴らしい。演奏終了後に写真撮影なぞしている場合ではない。客席に走って演奏を聴きに行きたいのが本音だ。うちがうちなりに最高の演奏をしたとしても、次の団体は神大。なにやら諦観めいたものがある。音楽は詰まる所技術なのだ。
SMEによってCD化される本大会であるが個人的には吹き逃げをしようかと思っている。まあそのつもりで吹いてやっと音量的には合格点といった所であろう。攻めて攻めて攻めまくるしかない。音楽家でいられるのもあと僅かなのだから。
全国大会が終わった。日が変わった今日、心の底からの叫びをミューズに響かせながらかみ締めた喜びは軟着陸しつつある。昨日は、帰宅して「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聴きながら余韻を味わう内にいつのまにか寝てしまったようだ。そして今日、職場・一般の部を聴きに再びミューズへと足を運んだ。ジェルで固った髪が気になって床屋なんて行っていたものだから一般の部の途中からの鑑賞となってしまったのが残念だ。しかもこの残念は後に増幅する。一般の部のトップバッターである大曲吹奏楽団が素晴らしい演奏をしたらしいのだ。
私が座った席は3階席の1番前。ふと下を見ると審査員席が丸見えで双眼鏡でもあれば審査過程まで判別可能である。とある審査員の人の手元を見ているとかんあり採点が辛い。Aをつけることなど皆無でほとんどがCやDである。料理の鉄人のチャンさん状態といったところか。
全国大会は終わったものの、まだ気持ちの整理がついていない。いまいちすっきりしないのだ。理由はただひとつ、神大が銀賞、ということである。